みんな元気ですか
昨日の続きのパリのおはなし
僕はパリでひとりの不思議な少女と友達になった。
彼女は17歳くらいのとてもきれいな人。でもこの世の人ではない。それってこの世の人じゃないくらいにきれいって言うのと似てるけど・・・それくらいきれいな人なんだ。
名前はジュヌビエーブ。僕にはその名前がうまく発音できないからジュンって呼ぶことにした。もちろん少し親しくなってからの事。
ジュンがなくなったのは第2次大戦の終わりころ。つまりあのヒトラーの終わりの頃の時代なんだ。
ヒトラーのドイツ軍はその頃フランスを占領していた。だけど米英の連合軍やフランスのレジスタンス(抵抗運動)のために苦戦していた。同盟国のイタリアも負けた。もうひとつの同盟国の日本ももうすぐ負けることもわかっていたし、遠過ぎて援軍を頼むわけにもいかなかった。その頃はドイツとイタリアと日本の3カ国は戦争の同盟を結んでいたんだ。最後には敗色が濃厚になっていた。そしていよいよ連合軍がフランス北部のノルマンディー海岸から上陸したことが分かった。アメリカを中心にした圧倒的な武力を誇る軍隊がフランスをドイツ軍から解放するためにやって来たんだ。
ヒトラーは占領下のパリにいたドイツ軍の最高司令官、つまり自分の部下の将軍に連合軍がパリにはいってくる前にパリを全部焼き払えって命令したんだ。将軍はパリの主な建造物や公共の建物のほとんどすべてに爆弾を仕掛けてその命令を実行しようとしていた。
ジュンは少女時代貧しいパリの家庭に育った。狭いアパルトマンで家族みんなが暮らしていた。戦争のため生活はますます苦しくなっていった。
で仕方なくドイツ軍のもとで仕事をすることにしたんだ。友達や親戚からは裏切り者と呼ばれた。でも家族の生活のためにはしかたなかった。それがある日将軍の目にとまり自分の身の回りの世話をするように命令された。そしてジュンは16歳の時に将軍の愛人になった。
将軍はまだ幼い彼女にはとても優しかったんだ。だから彼女も一生懸命につくした。フランスの仲間からは裏切り者と呼ばれながらも・・・
将軍は最後の日を迎える時ヒトラーからパリを焼き払うように命令されていることにとても悩んでいた。本当は心の優しい人だった。しかし部下の手によってパリを徹底的に破壊する準備は着々と進んでいた。それを知ったジュンは一生懸命に将軍に自分がどれだけパリを愛しているか話をした。落ち葉の積もるリュクサンブール公園で遊んだことや、家族が飼っていた子犬の事、自分が通っていたポルト・ド・リラの近くのリセ(小学校)の事を話したんだ。彼女にとってはその一つ一つが宝石のような思い出だったんだ。だからパリを破壊しないように将軍に頼んだ。それまで迷っていた将軍は最後の最後の瞬間にジュンの言葉を思い出してヒトラーの命令に従うことをやめたんだ。将軍には本当に勇気のいる決断だった。ヒトラーに銃殺されることはわかっていた。しかしこの美しいパリを破壊してしまう事は彼には出来なかった。
なぜならこのころ将軍は純粋で妖精のようなジュヌビエーブを心から愛していたから・・・
その日の午後ヒトラーから電話がかかって来た。
「パリは燃えているか」と・・・
ドイツ軍が退却する前にジュンは将軍の部下の若き将校によって射殺された。
将軍をヒトラーの命令に背かせたのは彼女だってわかったから・・・
・・・・・・そして今のパリがある・・・・・・
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(このお話にはまだまだ続きがあるよ・・・)
“地球(テラ)の旅立ち パリは燃えているか 2” への 2 件のフィードバック