みんな元気ですか![]()
昨日の続き![]()
ワコの15歳の人生は終わった・・・
美しく燃えた命の終わりだった。
ワコの葬儀はひっそりと残った関係者のみで行われた。
テンゾーもその葬儀にいた。
その周囲では杜月笙の組織の若者が周りを目立たないように警戒していた。
みな拳銃を持ってテンゾーを守っていた。
さびしい葬儀だった・・・
日本租界の日本人は自分たちがユダヤ人をかくまった関係者だと思われて危害が及ぶことを恐れた。
だから堂々と葬儀に参列するものはほとんどいなかった。
しかし誰もがワコの死を心から悼んだ・・・
そして次の朝になるとたくさんの花がワコの墓石に飾られていたのがわかった。
墓石が埋もれて見えなくなるくらいたくさんの花だった。
花は夜のうちに飾られていた。
それが幾晩も続いた。
暑かった上海の夏ももう終わる・・・
その日墓地には季節外れの蝶がたくさん舞っていた。
テンゾーもその光景を遠くから見ていた。
彼の白いパナマ帽には一匹のトンボが長い間とまっていた。
この日を境にしてテンゾーの姿を上海で見たものはいない・・・
数日後彼の姿は香港にあった。
日本に帰る途中でユダヤ人の避難民を見届けるためであった。
テンゾーは自分のしたことが間違っていなかったことを知った。
今はつらいがこれを乗り切れば皆元気に暮らして行けるだろうと確信した。
誰もがテンゾーに厚く礼を述べた。
そして愛娘の死に心からの哀悼の意を表した。
ワコが自分たちのためになくなったことに言葉もなかった・・・
子供たちはテンゾーの顔を見るとワコを思い出して皆が泣いた。
レパルスベイで静かに海を見ているテンゾーの姿があった。
誰もその姿が彼だと気づくものはここではいない。
彼の白いパナマ帽にまたあのトンボが止まっていた。
その時テンゾーはトンボの英語名を思い出して悟った・・・
ワコが小さな龍の精霊になったことを。
パナマ帽を目深にかぶり直すとテンゾーは小さな声で言った。
「ワコ、また会おうな」って・・・
…涙が止まらなかった。
このお話は一応これで終わります。
続きはまたいつの日にか・・・
最後まで読んでくれて本当にみんなありがとうね![]()
(これでゆっくり眠れるよ・・・
って、またいつも寝てるやんて突っ込むのは誰だ
)

