みんな元気ですか
神の予言・・・
芹沢は庭にきれいな菜の花を咲かせてくれたN子爵邸の老欅を
たずねます。
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—樹が人間に話すなんて驚いた。
—自分たちもいのちがあるもの話しますよ。 ただ今まで先生に
耳がなかったから聞こえなかったまでで・・・よかった、
これからお互いに話ができるのだ。先生お宅の泰山木とも、
小鳥たちの仲介で、話しているから、お宅の様子は、みな
知っていますよ・・・
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その後老欅は自分の歴史を語り始めます。それどころか自分がいる
東中野界隈の事を詳しく説明します。芹沢が小説を書く題材がなく
悩んでいる事を知っていてその手助けをしようとしたのです。
それでも芹沢は書く題材に悩みます。もう86歳です。
今度書く長編がおそらく最後になるだろうと予感がします。
何か意義のある内容の作品を残しておきたいと思うからです。
次の夏、芹沢は再び軽井沢の自分の森で聞いたあの天からの声が
もう一度聞きたくなり寝椅子を出して待ちます。
すると再びあの厳かな声が聞こえます。
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—汝は何故神について書き始めないのだ。
–中略–
かつて汝は、(大宇宙を創った)神とイエスの関係について
探求した事がある。だが、結論に達しないで、あきらめたなあ。
言っておく、神はイエスに天くだって使命を果たさせたぞ。
いつか、そのことは、明確に知らせる・・・
(芹沢がその声がどこから聞こえてくるのかいぶかしく思い、身じろぎを
するとその声が突然途絶えます。芹沢は実験のつもりで翌日もさらに
森で仰臥しその声を待ちます。すると・・・)
—まだ書き始めないのか。神はイエスに天下ったばかりではない。
その以前に釈迦にも天くだったぞ。キリストの教えも、釈迦の教えも
偉大な同一の親神の教えだ。こう言えば汝はすぐに偉そうに反論
するだろう。釈迦の教えである仏教は、釈迦の悟りによって大成した
宗教で、神と言う概念はないと。イエスの場合も、汝は明確な認識は
ないものの、納得した。釈迦に関して、汝は全く無知だ。
今はそれでいい。双方とも汝の書くときには、必ず詳しく教えるからな。
今はただ、汝が実際に神を信じた時のことから書けばよい。急いで
はじめなければならんぞ。いつ寿命が終るか、わからんからな。
いそぐんだぞ。わかったな・・・
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芹沢はこの言葉に自然に頭が下がってしまいます。
自分の事を自分以上に知っているものがいたことに。
このあと芹沢はこの声の事を疑う事をやめます。
そのままを受け入れたのです。
神として・・・。
その後この神との会話を最後の長編として完成させます。
書きはじめたのが、芹沢86歳の時の事でした。
さらに亡くなるまで続きの長編を書き続けます。
それが・・・
「神の微笑(ほほえみ)」
ではじまり・・・
「神の慈愛」
「神の計画(はからい)」
「人間の幸福」
「人間の意志」
「人間の命」
「大自然の夢」
「天の調べ」・・・で終わります。
96歳の時の最後の作品でした。
神は芹沢がこのシリーズを書き終えるまで
命を与えました・・・。
「生も死も
ただこの日 一日
よろこびて 生きるのみ」
まるで、新しい世界の夜明けを告げるような
輝いた声が、天にも、地にも、響きわたっていた・・・
(天の調べより・・・)
神が、まるでその日が来る事を予言しているかの
ように聞こえるのです。
世界の夜明けが・・・
(世界は命の喜びに満ちていました・・・)