みんな元気ですか
水たまりは異次元への扉・・・
ケンタは夜中にこっそりと家を抜け出した。
あれからお母さんもお父さんも何事もなかったように
普段と変わることがない。
家族が一人いなくなるなんて普通じゃない。
両親はそれを気にしている様子もない。
妹をさがす気もないらしい。
ケンタは思った・・・もしかして突然ボクがいなくなっても両親は
何の心配もしないばかりか探すことすらしないんだろうか。
ケンタは必死に思い出そうとした。
ボクはいつからこの両親と暮らしているんだろう。
なにも思い出せない。
でも不思議に小さい頃の妹の記憶は確かにある。
妹が歩き始めたころ公園で遊んであげたことや
少し大きくなったら川で一緒に魚釣りもした。
夏には海にも行った。
妹が波にさらわれそうになったときに助けてあげた記憶もある。
クッキーとはいつも一緒だった。
でもその思い出の場面に必ずいるはずの・・・両親がいないんだ。
子供だけで海に行くはずがない・・・。
やっぱりこの家は何かが変だ。
というよりこの世界はなにかがすごく変だ。
ケンタはある決意を胸に秘めた。
みんなが寝静まったらあの底なし沼に行ってみることにする。
もう一度クッキーを探してみるんだ。
ケンタにとって妹を探すことはすでに自分の
消えた過去を探す事にもなっていた。
月明かりが照らす夜の原っぱは静かで物音一つしない。
静かすぎるこの世界もおかしい。
普通ならどこかで犬の鳴き声や少なくとも虫の声くらいは聞こえる。
そう言えば原っぱの脇のバイパスを通る車の音もしない。
原っぱは完全な静寂に包まれていた。
ケンタはあの沼に近付いていく。
その時ケンタはかすかに妹の声を聞いたような気がした。
その声は遠くから聞こえてくる。
「おにいちゃん・・・」。
声があの沼の方からが聞こえてくる。
水面を覗き込むがいつもとかわらないあの水たまりがあるだけ。
でもここまで来てやることは一つ。
ケンタは思い切って水に手を入れてみる。
それはいつも知っている水の冷たい感触ではなかった。
続きはまたね・・・
(物陰からかすかにだれかが呼ぶ声が・・・おミャ~さま・・・)