バスを降りたそのあとに

みんな元気ですかドキドキ

ショートショート物語・・・グッド!

孫娘の手を引いて私はバスに乗り込みます。

家からそう遠くない公園で遊び疲れて二人で帰るところです。

もうすぐ日暮れです。

夕焼けがとてもきれいです。

孫娘が言います「おばあちゃん、おなかすいたね。

早くお家に帰ろうね。」

私が答えます「そうだね。

きょうはいっぱい遊んだからおなかすいたね。」

そのバスは海岸どおりをしばらく走ってから

近くの電車の駅でとまります。

そのあと山沿いの道をもどります。

途中で男の子が3人と女の子が2人乗ってきました。

みんな小学校2~3年生の低学年です。

運転手さんとも顔なじみのようです。

みんなで元気よく挨拶します。

声をそろえて「おじさんこんにちは」。

走り去る窓の外の景色をみんなで眺めながらこんなことを

話あっているのが聞くともなく聞こえます。

あっ、あそこがボクの家があったところだ。

学校の隣の木が元気になってるね・・・」

その5人は電車の駅から一つ目の停留所で降りました。

「おじさんありがとうございます。」

またみんなで声をそろえて挨拶します。

そのうちの一人が最後に降りるときに

運転手さんにそっと伝えました。

その言葉を私たちも聞くともなく聞いてしまいます。

「おじさん。いつもボク達をバスに乗せてくれてありがとう。」

その言葉に何か違和感を覚えて

子供たちが乗って来たところを思い出してみます。

そう言えばその子たちは乗る時にも降りる時にもバス賃を

支払っていなかったのです。

いぶかしく思いながらもそう言うこともあるかなと妙に納得します。

子供たちが降りた後不思議な光景を目にしました。

バスが発車します。

後部座席から後ろを見ていたら5人の子供たちが

道を横切って海岸の方に走って行くのが見えます。

その光景を眺めるともなく眺めていました。

すると子供たちが一人また一人と姿が消えて行くのです。

よく見ると虹色の光が姿が消えたそのあとに残っています。

その光がだんだんと空に向かってのぼって行きます。

その時に思い出しました。

ここでたくさんの人が津波にさらわれて亡くなったことを。

きっとあの子たちはその時に亡くなった魂なんです。

でも家の人がずっと悲しみに暮れていたので

それが心配で天国に行くことが出来なかったんです。

でも時が経ちやっとその時が来たんです。

私と孫娘もそれを見て安心しました。

孫娘の手をひいて私もバスをおります。

孫娘が私に言いました。

「おばあちゃん・・・私たちももう帰ろうね。」

私たちも二人これでやっと光になることが出来ます。

最後の子供たちの魂が

天国に上ることを見届けたんですから。

私たちが乗って来たバスも光になって上の方に

あがるところが見えました。

そばを歩いていた村人はバスが横を通るような気がしました。

道を少しよけて歩きます。

でもなにも追い越してはきません。

なんだかさわやかな風を感じただけでした。

(二人を見届けるボク・・・ドキドキ

ペタしてね

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