みんな元気ですか
昨日の続き・・・
本当はシャルトルの大聖堂は世界遺産に登録されているくらい見事な建物なんだ。
でも僕たちはその場を後にすると見たものの重さに圧倒されて二人ともなんだか無口になっていた。
その空気を変えようとジュヌビエーブ(ジュン)は話題を変えた・・・
「戦いの歴史だからこそ光輝く物もあるのよ」って・・・
ジュンの説明は僕にはそれはそれでとても新鮮だった。
例えばヨーロッパの建物・・・ほとんどが石造り。
そうなった理由は単純。地続きのヨーロッパでは戦いが絶えなかった。
だからいつの時代の支配者も敵に焼き討ちにあうことを恐れて燃えやすい材質の家は作らせなかった。
結果石で住居や公共の建造物を作ることになった・・・
でも石は不思議。自らの意思と意識を持つ。
そのことに気が付いた一部の石工たちは特別な組織を作りその秘密を独占するようになった・・・
後世ナポレオンは石の秘密を探ろうとエジプトのピラミッドに特別な執念を燃やしたくらい・・・
石で特別に作られた建造物(作品)は何百年ももつ。それは単に石が頑丈なだけではない。
石自体が作品としての意思を持って自分たちの姿を維持しようとするから・・・
その作品たちはいつの時代にも輝いて人々を魅了し続けた・・・
ジュンの説明はとても納得・・・
彼女は続けた・・・
でも日本の国の建物や木の芸術作品も素晴らしい。
それは樹木の性質を知りぬいた人だけが到達出来る世界・・・
樹木の精霊と交感することを許された人たちの世界・・・
いい例がYENKU-SHOUNINだわ。
かれは木の中に宿る意識の姿をとりだす匠だったの・・・
作品を彫ったのではない。木の中の命をとりだしたの。
だから彼は生涯で一万体以上の仏像を彫ることが出来た。
それもナタ一本で・・・
そこまで聞いて僕はそれが円空上人の事だとやっとわかった。
ジュンの話は時々飛ぶんだ・・・
でもきれいな人だから全然気にならない・・・
そして次の言葉は耳を疑った・・・
私の日本の友達に”いちきしまのひめのみこと”と”このはなさくやひめのみこと”という人(精霊)がいるの・・・
彼女たちは人々が自然との調和を大切にするように常に心を砕いている。
二人のアプローチやスタイルは全然違うけどね・・・
”いちきしま”は自分が犠牲になって人々に真実を伝えようとしている・・・
自然災害や森林伐採などで自然が破壊されることによって自然の大切さを教えようとするの。
もっと大きなことにも犠牲になるわ・・・必要なら・・・
それに比べて”このはなさくや”はきれいな桜の花の中に自然を印象付ける・・・
自然の感動的な姿を見せて人間が持つ自然愛の心を呼び覚ますのよ。
日本に友達がいることにびっくりしたとジュンは僕に聞いた。
世界は今一つになろうとしているの。
だから精霊たちの交流も以前とは比べ物にならないくらい世界中で活発になってきているわ。
私たち精霊の世界では国境の意味なんてとうの昔になくなってるのよ・・・とジュンは言った。
そうだね・・・と僕。
僕がジュンに吸い寄せられるように友達になったのも必然だったんだとその時やっと気がついた。
僕は心の中で「君と友達になれてよかった。本当にありがとう」と言った。
ジュヌビエーブは輝くような笑顔を僕に見せた。
僕の心の中のつぶやきは彼女には聞こえていた・・・
僕たちの小さな歴史の旅ははからずも未来の希望につながる大きな役割を持っているかもしれなかった・・・
思いや祈りは必ず届くことを僕たちは知っている・・・
パリは今日も燃えている・・・
希望と言う光を世界中に輝かせて・・・
オーボワールジュヌビエーブ、マプティット、アビアント・・・
(さよならジュヌビエーブ、僕の可愛い人、またね・・・)
(パリでおきた事を友達の木に話している僕
こんなことやあんなことがあったんだよ・・・)