みんな元気ですか
お盆の季節の少し怖い話し・・・
それは今と同じような暑い時・・・
イギリスのロンドンで体験した実話。
いまから大分以前
イッピーパパがアメリカの投資銀行にいた頃
仲間と会議をするために同じ会社のロンドン支店に
出張に行った時のこと。
泊ったのはロンドンの中心地SOHOという地区にあるサボイホテル。
1800年代後半創業のかなり古い歴史のあるホテルです。
インテリアもアールデコで統一されていて
決して近代的ではないけれど・・・
どちらかと言うと古きよきイギリスの伝統を大切にしているホテルです。
ロンドンになじみのある方ならおわかりいただけるかもしれませんが
ストランドから少し奥まったところに建つホテル。
国鉄と地下鉄のあるチャリング・クロス駅から徒歩約5分。
すぐそばにとても賑やかなウェストエンド、シアターランド、
トラファルガー広場、コンベント・ガーデンだけでなく、
ロンドンで一番大きなショッピングエリアにも近い場所にあります。
ホテルの背後にはテムズ川が一望できます。
そんなにぎやかな場所にあるホテルにも・・・出るんです・・・
イギリスというところは・・・。
その日会議を終えて仲間たちとおいしいワインで食事をし
そのあと仲間に連れられて会員制のカジノで少し遊び
ホテルに帰ったのは深夜の事でした。
シャワーを浴びて就寝しましたが
時差の関係もありなかなか寝付けません。
しばらくうとうとしましたが
夜中の2時15分の事でした。
なぜ時間をおぼえているかと言うと
日本は何時くらいだろうと気になって時計を見たから覚えていました。
その時です・・・
私の部屋の外を重そうな足音がコツコツ・・・コツコツ・・・
と響きます。
とてもゆっくりとした足音です。
こんな深夜に歩くのはどんな人だろうといぶかしく思いましたが
確かめる気にもならずそのまま通り過ぎるのを待ちました。
でもその足音に少し違和感があるのです。
と言うのもその足音がとても重い感じがしたからです。
サボイホテルの廊下は板張りです。
その上に厚手の緋色の絨毯が敷いてあるので足音がそんなに響くのがおかしいのです。
まるで軍靴のような足音です。
その足音は部屋のすぐ外にまで近づいてきます。
その足音を聞いていたらなんだかうすら寒い感じがしてくるのです。
だから心の中で早く通りすぎてくれよ・・・と思います。
でもその足音は自分の部屋を通り過ぎてはくれなかったのです。
私の部屋のそとで立ち止まる気配がします。
私はおいおいなんなんだよ・・・とおもいました。
次の瞬間に信じられないことが起きました。
なんとその足音が私の部屋の中に入って来るのです。
部屋には重い木製のドアがあります。
もちろんそのドアを開けなければ部屋にははいれません。
しかしそのドアが開いた気配はありません。
足音だけが部屋の中に入ってきました。
私はその瞬間に金縛りに遭ってしまいました。
重いものに押さえつけられて身動きをすることもできません。
胸の上に何トンもあるような重さの石を乗せられたような感じでした。
それに恐怖で目をあけることもできません。
眠ったふりをして時が過ぎるのを待ちます。
足音は私の部屋の中を歩き回って何かを調べているようです。
そして私が寝ているベッドに近づいて来ます。
私はそのまま目をつぶっています。
その「気配」は私が寝ているのを上から見下ろしています。
なんだか息使いまでもが聞こえるようでした。
不思議な事に私は目をつぶっているのですが
その「気配」が軍人の恰好をしていることが分かるのです。
立派なひげまでたくわえています。
深い表情をしています・・・。
しかししばらくじっとしていると「気配」は探している相手と違うと
思ったのか静かに来た時と同じように部屋から出て行きました。
ドアを開けもせずに・・・。
足音だけが遠ざかって行きます。
もう安心だと思った瞬間にベッドから起き上がろうとして
ベッドの頭にある金属の重い飾りに嫌と言うほど左手の肘を
ぶつけてしまいました。
左手はしばらくジーンとしびれていました。
その痛みの後遺症が10年以上たったいまだに
左手の小指と薬指のしびれとして残っています。
私はあの足音が戻って来ないかしばらくひやひやしていましたが
もう戻って来ることはありませんでした。
翌日仲間にその話をすると
一応真剣に聞いてはくれますがあまり相手にしてくれません。
実害はないし・・・
もちろんホテルにクレイムをつけることなどやめた方がよいと言うのです。
なぜならロンドンではそのような事は頻繁に起きるので
だれもまともに取り上げようとは思わないそうです。
それにイギリスでは幽霊が出る不動産物件は
通常よりかなり高額な評価をされるようです。
仲間の一人は・・・
そんな夜だけ出て来る「気配」と友達になっているそうです。
たまには話し相手にもなってくれると言ってました。
一緒にお酒をちびちびとやりながら・・・
イッピーパパは思い出すのです。
グラスに響く氷の音を聞くたびに
そのロンドンの旅の事を・・・
もちろん・・・その時に飲んでいるのは
スコッチです・・・
(あっ、君の後ろで・・・誰かがのぞきこんでいるよ・・・)