みんな元気ですか
きのうのつづき・・・
ケンタはおそるおそる水の中に手を入れる。
でもそれはあの冷たい水の感触とは全く違った。
と言うよりも水に触れているという感触がないんだ。
まるで空気みたいにふわっと包むような感じがする。
確かにこの中から妹の声が聞こえる。
ケンタは思い切って沼の中に飛び込むようにはいって行った。
するとそこは上も下も右も左もない世界。
真っ暗でもないけど光はどこから来るのかわからない。
自分を卵のようなうっすらと白い光が包んでいる。
その光の卵が自分を包んだままトンネルの中のようなところを
すごいスピードで走りぬけてゆく。
ケンタにはそれがかなり長い間のことのように感じる。
そしてなにか映像のようなものが見え始めた。
最初は今までの世界での曖昧な映像が飛ぶように流れている。
妹と二人であの家の中にいるところ・・・
公園や海岸にふたりがいる・・・
あの原っぱで野球をして遊んでいる場面・・・
自転車が途中でふわふわ空中に浮いているのが見える・・・
(あれはきっと友達が沼の中に投げ込んだ自転車だ)
(ほかにもなくなったとおもった虫取り網や野球のグローブ)
クッキーが夕暮れの中で沼の中に沈んでいく・・・
(ボクはあの時そこはダメ!って叫んだ)
そのあとしばらく何も見えなくなった。
ケンタは心細くなった。
しかしまた妹の声が聞こえてきた。
「おにいちゃん・・・」
今度はよりはっきりとその声が聞こえる。
たしかにクッキーが自分を呼んでいる。
でもケンタの意識はその声が大きくなるのと反対にだんだん
薄れていった。
薄れていく意識の中で自分がなにか水面のようなものを
通り抜けていくような気がした。
その水面はガラスみたいなんだけど
通りぬけるときにまるで水のように波紋が広がるんだ。
その時ケンタはこれであの世界から抜け出す事が
出来たんだと思った。
奇妙な安堵感がケンタを包む。
そしてケンタは何が起きているのか確かめたい気持ちと
反対に安堵感の中で眠りに落ちてしまった・・・。
同時に、自分がもといた本当の世界に戻ってこれた
というかすかな安心感を覚えていた・・・。
そして今通り過ぎたのは「鏡」だと薄れる意識で思った。
続きはいつかまたね・・・
(沼の底から水面をみてる・・・ボク・・・じゃなくて・・・あれ~、なんでにゃもす)