みんな元気ですか
アメリカパンサー・・・
パンサーは体の大きなヒョウの仲間です。
以前はアメリカ大陸には沢山いました。
バッファローと同じ運命をたどりました。
今では絶滅危惧種を通り越して絶滅したかもしれません。
水の謎と少し離れますが水つながりです。
以前こんなおはなしを書きました・・・
人間と一緒に暮らすことを選んだ犬や猫のような動物は
どんなにひどい環境や境遇にあっても
種が絶滅することは考えられません。
しかし野生の動物は環境が変化すれば
人間がその種を守るしかありません。
しかしそれも多くの場合は間に合いません。
今でも多くの野生の動物が死に絶えて
地球上から姿を消してしまったかもうすぐ絶滅を待っています。
そんな動物たちの最後に人間が意識を向ける事はあまりありません。
無関心は闇の糧。闇にむしばまれて消えて行く彼らにせめて
かすかな光でもあたってほしい。
それが出来るのは人間しかいません。
・・・
こんなことがありました。
ボクは夢の中で空飛ぶファルコンになって遠くまで出かけます。
ボクの中では時間や距離は問題じゃない。
それにボクは空飛ぶファルコン。
ボクどんどん遠くまで飛んで行った。
ふと気づくとボクを呼んでいるような声が聞こえる。
吸い寄せられるように降りて行きます。
そこにいたのは一頭の金色に輝くような毛並みのアメリカパンサー。
でももうかなりの年齢にみえます。
「わざわざここまで降りてきてくれてありがとう」とボクに礼を言った。
彼はボクに話を聞いて欲しいと頼んだ。
その時彼がもうすぐ向こうの世界に行くんだって事がわかったんだ。
だからお話を聞いてあげることにしたんだ。
彼はゆっくりと自分と自分の一族の事を語り始めた。
彼の名前は”踊る雨”。
誇り高いアメリカパンサー。滅びゆく種族の長。
平原を見下ろす一番高い大きな岩の上にその老身を横たえていた。
夕日が沈もうとする景色をじっと眺めていた。
昼間太陽に暖められた岩肌が彼に穏やかな安らぎを与えている。
仲間は少し前にみんな向こうの世界に旅立ってしまった。
"踊る雨”が愛した妻の“新月”。
狩りのベストパートナーだった”夜明け”。
大地と一番うまく折り合いをつけていた”黄昏”。
そして沢山の勇敢な若者たち。
みんな素晴らしい仲間だった。
それぞれが多くの才能を持っていた。
みんなが自分の才能に誇りを持ち、その才能を楽しんでいた。
みんなともに生きていることを楽しんでいた。
大地は”踊る雨”とその仲間を快く受け入れていた。
彼はリーダーとして毎日大地に感謝の祈りをささげるのが日課だった。
彼は自分の事をやさしく包んでくれるこの大地が好きだった。
ここはエバーグレイズ国立公園。
アメリカのフロリダ半島の南端に位置する広大な湿原の中にある。
数百、数千という種類の水上、水中の植物や動物の楽園だった。
その食物連鎖の頂点にいるのがアメリカパンサー。
広大な湿原は豊かな水の恵みに満ちていた。
この湿原は巨大な川でもある。時速50センチくらいの、
目にはそれと感じられないくらいのゆったりとした速度で流れている。
川といっても湿原なので普通の川のイメージとはかなり違う。
しかし確実に流れてそこに棲む多くの命に豊かな栄養を運んでいた。
半島の先端であり、汽水域にも近く、
海の生物もその水域には沢山生息していた。
ジュゴンや白イルカなどもいる。
しかしここの生態系は昔に比べると激変してしまった。
冬でも温暖な気候のためにアメリカの一大避暑地として発展を遂げた。
このため人口が増えて大量の生活用水を必要としたために
湿原の水が枯れ始めた。
湿原の面積は今では以前の半分以下になってしまった。
このため多くの生き物が絶えた。
食物連鎖の頂点にいる彼らはここで暮らすことが出来なくなってしまった。
仲間の多くはほかの土地に移動した。
しかし”踊る雨”はリーダー”として最後まで残った。
まるで沈没していく船と運命をともにする昔の勇敢な船長のように。
今ではここで生息する生物の種類は以前の10分の1になってしまった。
彼は知っていた。
よその土地に移動してもそこでは暮らせないことを。
その土地に前からいる種族と戦いになるかもしれない。
だからこの土地に残った。
今では人間の保護センターにまもられている数頭をのぞいて
彼が最後のアメリカパンサーになってしまった。
しかしかれは自分の役目が決して終わりではないことをボクに伝えた。
多くの植物や動物とともに暮らしたこの大地の記憶を
誰かに託すことが自分の役目。
大地の記憶は必ず人間の意識の中によみがえると彼は言った。
なぜなら人間も大地の一部。
大自然の一部だから。
そう言い残して彼はその岩の上から消えた。
ボクが見ている前でひとりでにゆっくりと。
彼の姿が半透明になって消えて行った・・・
ボクはその時初めて彼が大地と水の意識であった事に気がついた。
現在アメリカ政府は9000億円程度の巨大な予算を組んで
この国立公園を復活させようとしているそうです。
(友達になったのに・・・もう彼はいない・・・)