みんな元気ですか
前回の続き・・・
栞は六つのすべての面に触れ一つ一つに言霊を吹き込んだ。
その言霊の響きは水の中にも関わらずみんなの頭に心地よい波動となって伝わってくる。
栞の動作のすべてに無駄がない。
それは動きとも舞ともつかぬ流麗さで流れて行く。
古代の神官の舞のように・・・
もうみんなはこのクリスタルに何が起きても不思議ではないと思い始めている。
同時に・・・いよいよなにかが起きるという期待が高まる。
クリスタルはそのタイミングを裏切ることはなかった。
それは数万年の間この時を迎えるためだけに
今までその姿を自ら維持してきた・・・
それを守って来た遺跡の建物はすべて役割を終えたように
今静かに横たわっている。
栞が自分の役割の儀式を終えたように一歩下がる・・・。
そして教授とやまとに目で合図を送る。
教授とやまとは一歩前に出てクリスタルに近づく。
二人でクリスタルの正面に向き合う。
すると6角形の正面の部分が少しずれているのが分かる。
そんなものは以前には全くなかった。
その面を引くと難なく開いた。
以前はまたく分からなかったがそこが扉になっていた。
中をのぞいてみる・・・。
そこには・・・
何もない・・・
栞に促されてやまとがもう一度中を除く・・・
するとかすかにきらりと光を反射するものがあるが全容は分からない。
よく見るとそれは何か丸いもののような形をしている。
教授はそれを見てとっさに思った・・・。
これは海水と全く同じ屈折率を持ったガラスのようなもの・・・だと。
だからよく見ても透明にしか見えない・・・。
と言うよりそこには何もないようにしか見えないのだ・・・と。
いぶかしく思うやまとを横に教授は自分でその球体のようなものを一人でとりだした。
クリスタルの内部の台座の上に置かれたそれは大きいものではない。
直径約20センチくらい。
しかしそれは異様な形をしていた・・・。
光に透かしてよく見ると人間の頭がい骨の形をしている。
栞が口を開いた(頭の中で・・・)・・・
「これはクリスタルスカルです。
とても貴重な物です。」
栞とイルカを除いたみんなが思った・・・。
これが・・・胎蔵界曼荼羅・・・なのか・・・と。
教授の手にあるこのクリスタルスカルを全員がじっと見ている。
先ほどまでゆっくりと周りをまわっていた
ワクーマとつきのの2頭のイルカも今はじっとしている。
誰もがそれを始めて見るのだ・・・
ただ一人栞を除いて・・・。
しばらく沈黙をしていたイルカが静かに・・・
再びみんなにビジョンのメッセージを送って来た・・・。
「僕たちは精霊・・・これがなんであるか・・・
見たことはないけれど・・・知っています。」
「そして栞さんはご存じだけど・・・
この中にはアスカのメッセージが込められています。
それを僕たちは取り出すことができます。
そのためにこれを今から教授の研究室まで運んで下さい。」・・・と。
他の全員には全く想像もつかなかった・・・。
この中にメッセージが入っているとは・・・
それを取り出すとは・・・
一体どういうことなんだ・・・
イルカはさらに言った・・・
「僕たちもご一緒します」・・・と。
クリスタルスカルはいまその永劫とも等しい眠りから覚めた・・・
そして新しい旅に出る・・・
遺跡の建物たちのすべてがその旅立ちを祝福しているかのように・・・
静かにゆったりと波に揺れていた・・・
まるで別れの手を振るように・・・
このクリスタルスカルが人類にもたらす物の大きさは
まだその時は誰も知らなかった・・・。
続きはまたね・・・
(ねむりはいつか覚める物・・・僕も目覚めねば・・・おなかすいたし・・・ってそっちかい)