水の「謎」 5 お兄ちゃん・・・

みんな元気ですかドキドキ

異次元密度よりの帰還・・・グッド!

ケンタはおそるおそる水の中に手を入れる。

でもそれはあの冷たい水の感触とは全く違った。

と言うよりも水に触れているという感触がないんだ。

まるで空気みたいにふわっと包むような感じがする。

確かにこの中から妹の声が聞こえる。

ケンタは思い切って沼の中に飛び込むようにはいって行った。

そこは上も下も右も左もない世界。

真っ暗でもないけど光はどこから来るのかわからない。

自分を卵のようなうっすらと白い光が包んでいる。

その光の卵が自分を包んだままトンネルの中のようなところを

すごいスピードで走りぬけてゆく。

ケンタにはそれがかなり長い間のことのように感じる。

そしてなにか映像のようなものが見え始めた。

最初は今までの世界での曖昧な映像が飛ぶように流れている。

妹と二人であの家の中にいるところ。

公園や海岸にふたりがいる。

あの原っぱで野球をして遊んでいる場面。

三輪車が途中でふわふわ空中に浮いているのが見える。

(あれはきっと友達が沼の中に投げ込んだ三輪車だ)

(ほかにもなくなったとおもった虫取り網や野球のグローブ)

クッキーが夕暮れの中で沼の中に沈んでいく。

ちょっと待って・・・とケンタの意識がよみがえって来る。

その全てが「今までの世界」・・・と言う事はボクには

違う世界があったんだ・・・とケンタは思い出した。

なんだか分からなくなってケンタは心細くなった。

しかしまた妹の声が聞こえてきた。

「おにいちゃん・・・」

今度はよりはっきりとその声が聞こえる。

たしかにクッキーが自分を呼んでいる。

でもケンタの意識はその声が大きくなるのと反対にだんだん

薄れていった。

薄れていく意識の中で自分がなにか水面のようなものを

通り抜けていくような気がした。

その水面はガラスみたいなんだけど

通りぬけるときにまるで水のように波紋が広がるんだ。

その時ケンタはこれであの世界から抜け出す事が

出来たんだと思った。

奇妙な安堵感がケンタを包む。

そしてケンタは何が起きているのか確かめたい気持ちと反対に

安堵感の中で意識が遠のいた。

同時に、友達の声が聞こえた。

「おーいケンタ!早くボールを持って戻ってこいよ!」

ケンタは思い出した。

ボクは友達と野球をやっていた。

そして遠くまで飛んだボールを捜しに行った。

その時に水たまりがあったのを飛び越えようとしたんだ。

でもその手前でつまずいて思いっきり水たまりにハマってしまった。

でも不思議な事にボクはその時全然水にぬれることがなかった。

全ての記憶が戻ってきた。

ケンタは思った・・・

ボクはどのくらいあの水たまりの向うの世界にいたんだろうか。

一緒に過ごしたお父さんやお母さんは誰だったんだろうか。

それに向うの世界ではずいぶんと時間が経っていたのに

こっちの世界に戻って来たらまだ同じ時間の中にいる。

でも・・・本当に帰って来られてよかった・・・。

友達が不思議そうな顔をしてケンタを見て言った。

「あれ、ケンタ!さっきと違う服着てる。どうなってんだよ!」

ケンタはすぐ側にいる妹のクッキー見て言った。

「お家に帰ろう・・・。」

クッキーはまだ小さいけど何があったか

全部分かっているようにうなずいた。

「お兄ちゃん・・・」

続きはいつかまたね・・・グッド!

イッピーの独り言

(沼の底から水面をみてる・・・ボク・・・じゃなくて・・・あれ~、なんでにゃもすあせる

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