山のぬし様

みんな元気ですかドキドキ

男のその後・・・グッド!

山の渓流で美しい娘を自分の釣りざおと交換したあの男性は

その後こんな話しを耳にします。

そして自分がどんなに幸運だったかを知ったのです。

(山のぬしさま)

ある男の先祖に羽振りの良い男衆がいたのだという。

猟師でもないのに、どうやってか大きな猪を獲って帰る。

ろくに植物の名前も知らぬくせに、山菜を好きなだけ手に入れてくる。

沢に入れば手の中に鮎が飛び込んできたり火の番もできぬのに

上質の炭を持ち帰る。田の手入れをせずとも雀も蝗(ばった)

も寄りつかず秋には一番の収穫高だ。彼の一人娘が町の名士に

嫁入りする時も彼はどこからか立派な嫁入り道具一式を

手に入れてきた。手ぶらで山に入ったのに下りてくる時には豪華な

土産を手にしていたそうだ。さすがに不思議に思った娘が尋ねると

「山の主さまにもらったのだ」と答えた。

その昔、彼は山の主と契約を交わしたのだという。

主は彼に望む物を与えその代わり彼は死後主に仕えることにしたのだと。

何十年か後、娘は父に呼び戻された。

彼は既に老齢で床に伏せていたが、裏山の岩を割るよう主に

命じられたという。娘は自分の息子たちを連れ裏山に登った。

彼の言っていた岩はすぐに見つかり息子が棍棒で叩いてみた。

岩は軽く崩れ割れその中から墓石と白木の棺桶の入った大穴が現れた。

誰がやったのか彼女の父の名がすでに刻まれていた。

話を聞いた彼は無表情に呟いたそうだ。

埋められる所まで用意してくれるとは思わなんだわ。

それからすぐに彼は亡くなり、まさにその墓に埋葬されたのだという。

この話には後日談がある。

数年後、娘の夢枕に父親が立ったのだという。老いた姿ではなく

若々しい男衆のままの姿形であった。彼はなぜかまったく余裕のない

表情をしていた。彼女が懐かしさのあまり声をかけようとすると

彼は怖い顔でそれを止めた。そして一言だけ発して消えたのだという。

お前たちは、絶対に主と契っちゃならねえ。

翌朝目を覚ましてからも、彼女はその夢を強く憶えていた。

一体父は死んだ後、主の元でどんな仕事手伝いをしているのだろう?

その時、隣で寝ていた夫が起き上がり彼女に話しかけた。

夫の夢にも、養父が現れ何かを告げたのだそうだ。

しばらくして彼女の夫はその山を買い取り全面入山禁止にした。

しかしその理由は妻を含め誰にも教えなかったという。

+++

この話しを聞いたその男性はハッとしたのです。

仕事も友人関係も上手く行かなくなった時がありました。

そんな時に幾度となくあの妻と出逢った渓流にもどろうかと

思っていたからです。そして出来ることならあの霧のような

存在に会って自分の望む物を願って見ようかと思ったのです。

しかしその度に彼の美しい妻は彼を押しとどめました。

「あの場所には2度と入ってはいけない。」

妻は理由を言いませんでしたが彼もなんとなくそれを押し切って

渓流に行ってみる気にはならなかったのでした。

ボクも思います・・・

彼がまたあそこに行かなくて本当に良かったと。

イッピーの独り言

(ねっ、タナボタを喜んじゃいけないんだよ・・・汗

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