樹木との会話 作家芹沢光治良(せりざわこうじろう)

みんな元気ですかドキドキ

樹木との会話・・・グッド!

きのうからのつながりです。

動物との会話が出来る人は多くいます。

職業にしている人もいます。

「天才志村動物園」に出てくるハイジさんのような人です。

アニマル・コミュニケーターと呼ばれる人たちです。

それを教える教室もあるようです。

一方、花や樹木と会話が出来る人もいます。

特に最近子供たちの間でも増えているようです。

以前の世代でもそのような人はいました。

ただ動物や「樹木と話が出来る」という事は社会に

受け入れられる状況にありませんでした。

だから表だってそのことを言う人はあまりいませんでした。

そんな子たちもたくさんいたと思うのですが、社会の状況が

それを許さなかったのかもしれません。

そのことを封印してしまいました。

明治生まれの大作家の芹沢光治良もその一人でした。

以前書いたお話です・・・

芹沢光治良と泰山木の会話・・・グッド!

シリーズ→神と話した作家「芹沢光治良」より

「楓」(かえで)は芹沢に軽井沢で助けられます。

一方東京の芹沢の自宅にはこれも芹沢に助けられた

泰山木(たいざんぼく)の樹がいました。

晩年の作品「神の微笑」の最初の部分にこんな場面が出てきます。

+++

楓は目をかけてもらったので、感謝のつもりで、あんな風に

話しかけたのであろうか。それならば、東京のわが家の泰山木は、

もっと心を尽くして大切に育てたのだから、話しかける筈であるが、

そんな気配はなかった。・・・中略・・・

(芹沢は以前から心をこめて、土や肥料に細心に注意し泰山木を

育てます。その甲斐あってすくすくと育ち見事な花を咲かせます。

庭師も感嘆して、「樹木でも恩をしって報いたのですね」と

言うくらいでした。)

夏が終わって東京に帰って、僕は実験でもするように庭におりて、

泰山木を仰ぎ、その幹に掌を置いて、なあ、樹木が話しかけるなんて

ことはないなあと、言葉をかけてみた。 (すると・・・)

(クリック拡大)

(泰山木の樹)

—ようやく聞く耳をひらいたですか、先生、よかった。

その声に驚いて掌をたれて茫然とした。

—樹だって話しますよ。樹どうし話あえるのだから・・・樹どうしは

鳥を仲介にしますけれど・・・旧N子爵邸の道路に面した片隅に

老欅(けやき)が立ってますね。あの木も先生に大恩があるというので、

自分たちは相談して、お礼に先生ご夫妻をお慰めしようと、

自分の横の荒地のような5,6坪に来春菜の花を咲かせることに

したくらいですもの。楽しみにしてください。奥さんにも喜んでもらえます。

—その落ち葉をすてた処へ、菜の花を咲かせるって?

立ったまま動けない樹がどうしてそこに菜の花の種子がまけるんだね。

—まくのはうそです。

—なんだ、うその話か・・・おれをからかってはいかんぞ。

—うそって、とりの鷽(うそ)ですよ。ご存じないですか。雀よりすこし

大きくて、羽も声もきれいで・・・よく自分の枝にも群がっているけれど、

気がつきませんでしたか。あのN子爵邸の老欅が、種まきの事を鷽に

頼みました。

   話の内容はともあれ、泰山木と話が出来たと、実験の結果に満足

したが、どうしてその現象が起きるのか、不審でならなかった。

愛するものが、虚心に対すれば、樹木でも話すのだと、勝手に説明して、

わが心をおさめた。しかし、樹木と会話するというようなことは、

他人には病的にとられる懸念があるので、妻にも話せなかった。

・・・中略・・・

その年の11月末、庭にでてみると、頭上の泰山木の声がした。

—先生、あとで自分の背後の地面を見てください。

一面に菜の花の芽が出ましたから。雑草だと思って抜かないように、ね。

そんまま手を加えないで放任しておけば、

春には菜の花畑のようになりますからね。

+++

泰山木の言うとおり翌年4月始めにはあたり一面に黄色の花を咲かせ、

陽を受けて黄金に光っていたのです。

奥さんが庭に出てきれいだと感嘆するのですが、一方ではだれも種を

まかないのに、美しいけれど気味が悪いといいます。

不吉の前兆のようだと不安がるので、芹沢は、実はうそという鳥が

種子をまいたそうだと告げます。すると奥さんはまあ、あの鳥が、と目を

まるくします。鷽を知っていたのかと今度は芹沢がびっくりします。

こうして芹沢と楓や泰山木は会話がはじまります。

話が出来ないと思われていた存在との会話の始まりでした。

そして・・・

芹沢のまわりの世界が思わぬ広がりをみせます。

続きはまたね・・・グッド!

(泰山木の白い花)

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